飲食を目指す人に聞いて欲しい事2

前回からの続き

前回のお話で言いたかった事は飲食業は入口が広く
僕のように頭が良くなくても学がなくてもその気さえあればやって行けるという事。


僕はホテルで働き色んな事を学んだ
料理もそうだが先輩やシェフ達にお茶を入れたり
お酒を知ったり、遊びを覚えたり
今久屋でバーを経営しているバーレオンの高橋さんには夜の遊びを教えてもらったり


そしてその頃、今、可児でキッチンブランシュというお店をやられている金井シェフと出会う。
当時フランス帰りだった金井シェフ
フランス帰りでバリバリ仕事をこなす姿がすっごくかっこ良く見えて
僕はそんな金井さんに憧れフランスへいつか留学したいを思うようになった


僕がいたのは名駅のセンチュリーハイアット名古屋
僕が働き始めて2年くらい経つと急に閉店する事に
小さなホテルではあったが、小田急グループの大きな会社。
閉店なんて考えてもいなかった
今まで当たり前にあった物が急になくなってしまった


この時僕は他人に頼らず自分自身のお店でやって行こうと思う



会社は次の働き先を斡旋してくれたりしてくれたが
僕の行き先はもう決まっていた。
2年半貯めたお金と少しながら貰えた退職金でフランスへ行く事に


当時21歳の僕、フランスなんて当てもなければコネもない
働き先もなければ住む所だってない
今まで海外に行った事すらない。
思い立ったら即行動の僕は仕事を辞めた数週間後に僕はまさに包丁さらしにまいて1本
飛行機に乗っていた


当時つきあっていた彼女には私とフランスどっちをとるの?
って言われて僕は迷わずお前と別れてでも行く!と。
それでもなんだかんだ待っていてくれてその当時の彼女が今のマダム


さて、フランスへ行ったはいいが働き口がない僕は1週間でもう既に心が折れかけていた。
金井さんに教えてもらった手紙の書き方と履歴書の書き方、それを手当たり次第送った
10通、20通、返事はほとんど来ない、来ても答えはNO。
僕は手紙を送り数日後に直接レストランへ行き返事を聞きに行く作戦にした

そして何とか1件パリの1つ星のレストランに入る事ができた
日本のレストランと大きく違う事は2つ
年功序列的なものがない事。実力とやる気さえあれば登って行ける
そして、何も教えてくれないこと。
料理はほぼイメージで伝えられ、ざっくりと説明だけされる

そして僕らが自分自信で考えてシェフのイメージした
味、お皿のバランス、構成に近づけて行く
手取り足取り教えてくれない。
ただ、自分が仕上げた物に対してこうじゃない
もっとここをこうして、ああしてとダメだしされるだけ


営業中は忙しい厨房で常にオーダーが飛び交い
数少ない火口を使って80人のオーダーを完璧にこなさなければならない
そのためにはどうするか
自分の仕事だけじゃなく他のセクションの進み具合も把握しつつ
それに合わせて刻一刻と変化して行く肉や魚の火入れのタイミングを
合わせて仕上げる。
調理場は常に罵声が飛び交う
目、耳、鼻、舌、指先、全ての感覚を研ぎすまし集中する
頭の中は猛スピードで入って来た情報を的確に処理して
常に最適に行動する

人から考えを与えられるて動くのではなく
自分で考えて仕事をする。僕がこのとき学んだ事だ


休みの日にはレストランに食べ歩きに行ったり
マルシェに出かけ友人達と集まり
家で料理を作ってはあぁでもないこうでもないと
議論しあい、料理とワインで一日のんびりと過ごす


2年間僕はこうしてフランスで料理に明け暮れた生活をして
貯めたお金を全部将来の自分のために投資してまさに無一文
持物はまた包丁だけで帰国


コネなし、学歴なし、突飛な才能もなしの僕は
自分の夢と希望だけで何とかここまでやって来れた
当然、人種差別で風当たりを強く感じた事もあったし
仕事がうまく行かなくて自分自身いやになる事も
でも将来のビジョンだけはぶれなかった


僕ら飲食店の仕事は長時間労働で給料は安い。
その長い労働時間があっという間と思えるほど内容はぎっしり詰まっている
それをうまくこなして行く事が仕事のやりがいだと最初のうちは思えてくるが
そこにやらなくては行けないという義務感と責任感が乗っかってくると
かなりのプレッシャーだ。そんな中でも結果をださなくては行けない
そこで挫折してやめて行く人が多い。
逃げる事は簡単な事だ
その困難に立ち向かうには勇気がいる。
でも考えて欲しい、僕らはそれを一つづつ乗り越えて来ている事を
だからそれは自分でも乗り越えられる事を。
そして、その先にある物を見て欲しい。
僕は従業員として働いている時にお客さんに美味しかったよ!
って声をかけられる事が苦手だった。
なぜなら僕の内心は作ったのは確かに僕らなのだが
その料理を考えたのはシェフで
僕ではないと思っていたから
お客さんの反応が聞ける事は確かに嬉しかったが、なんだか悔しかった

今は自分で考え自分で作りその大変さは自分の想像以上ではあるけど
それで来てくれたお客さんが楽しんでくれたり喜んでくれたり
それはすごく嬉しい事だし、それが僕にパワーをくれる。
それが本当の仕事のやりがいだと思う。
社会には不適格な僕が唯一社会に認められ
そして、自分のやりたい事を貫いて生活できる

僕は飲食店というのは一番結果を出しやすい職業だと思っています
だから若い人には辛い事があってもめげる事なく頑張って欲しい
今悩んでいる人、頑張っている人、きっと大丈夫。
諦めてはいけません、逃げてはいけません。
将来きっとうまくいく。未来の自分を支えてくれるのは
今、頑張っている自分です。


そして、この話
まだまだ続きます

次回は頑張る頑張るだけでは頑張れない
お話をしたいと思います